当然巨大な宇宙船やスペースコロニーが必要だがそんな巨大な質量を宇宙まで飛ばすことは技術的に難しい。
そこで重力を制御する方法を見つける為に研究を重ねたが結局謎は解明出来ずプランAは断念せざるを得なかった。
一方プランBは従来の技術でも実行可能。
しかし現人類を見殺しにするプランBでは反発は必至。
そこで研究を続けるフリをしながら
「新惑星を見つけるまでには重力の謎を解いておく」と言い
密かにプランBを実行しようと目論んでいた。
◆ミラーの星では何故時間の経ち方が違うのか?
ミラー飛行士が待つ水の惑星だが
ミラーは見つからずしかも大津波に巻き込まれて時間を大幅にロスした後に宇宙船に戻ると23年の時間が経過していた。
この惑星は大質量ブラックホール:ガルガンチュアのまわりを公転しているため重力の影響を受けて1時間を過ごすと
地球では7年が経過していた。
これは一般相対性理論によると
「重力が強い場所ほど時間の進み方が遅くなる」
という事が証明されている。
質量が地球に約33万倍ある太陽の場合、その表面では地球よりも100万分の2秒だけ時間の進み方が遅い。
ガルガンチュアは太陽よりもさらに重力が強いため近づくほど時間の進み方が遅くなり、その表面(事象の地平線)では時間がほぼ止まって見える。
クーパー達はガルガンチュアのすぐ側にある惑星に降りたのでまともに重力の影響を受けて時間の進み方が遅くなった。
ただ本人が「時間が遅く流れている」と自覚している訳ではなく、あくまで「地球側から見たら遅く見える」というだけ。
クーパー側から地球を見たらビデオの早送りのようなスピードで時間が流れているように見えただろう。
これが「時間とは絶対的なものではなく相対的なもの」というアインシュタインの相対性理論である。
※この辺りの知識は雑誌「ニュートン」を読みまくりました。
◆クーパーは何故ブラックホールに落ちた?
マン博士がやらかしたお陰で甚大な被害を被った
エンデュランス号は燃料と酸素の殆どを失った。
これではもはや地球に帰る事は出来ない。
そこでクーパーとアメリアはブラックホールの重力を利用してエドマンズの惑星へ行く為のエネルギーを確保しようとする。
その途中で「後は任せた!」とクーパーが自分の宇宙船と共にブラックホールに落下する。
このシーンで「エンデュランス号の質量を減らす為に犠牲になったのか?」とか「”運動量保存の法則”によりエンデュランス号の進行方向とは逆向きに物体を射出する事で推進力を得たのか?」と思うが少し違う。
最初はブラックホールの重力を利用する事で移動エネルギーを確保しようとしたもののエドマンズの惑星に到着するにはまだエネルギーが不足していた事に気付いたクーパーはアメリアに黙って”ペンローズ過程”を実行した。
「ペンローズ過程」
宇宙物理学者ロジャー・ペンローズが提唱した「自転するブラックホールからエネルギーを取り出すプロセス」の事。
これはゴミを容器に入れ自転するブラックホールの””エルゴ領域”と”事象の地平線”の間に投入しゴミをブラックホールに捨てて容器のみを回収すると質量とエネルギーの等価性により「ゴミの質量+ブラックホールの減少した質量」に相当する加速エネルギーを取り出せるという理論。
しかしいったん入ってしまうと光さえ脱出出来ないはずのブラックホールからどうやってエネルギーを取り出せるのか?
それはブラックホールの「回転エネルギー」を利用したから。
ペンローズ過程で一番効率よくエネルギーを増やすにはブラックホール表面ギリギリで2つの物体の相対速度が光速になるように分裂させる。
そうすると理論上では最初に持っていたエネルギーの約1.3倍のエネルギーを獲得出来る・・・らしい。
ク−パーはこの理論を実行しようと覚悟を決めたがアメリアに止められる事を予想して直前まで言わなかった。
そしてガルガンチュア周辺のエルゴ領域にエンデュランス号が侵入した後クーパーは自らのレインジャーを切り離し事象の地平線に突入する事でエンデュランス号がエドマンズの惑星まで到達する為に必要な加速エネルギーを獲得させた。
◆ブラックホールに落ちて助かるのか?
アメリアを助ける為に
自らブラックホールへ飛び込んだクーパー。
実際ブラックホールがどれほどのものか知る由もないが、このシーンで「とんでもなくヤバい」という事だけは理解出来る。
実際、人間がブラックホールに落ちるとどうなるのか?
現在の物理学では
ブラックホールに落ちた物質は特異点に落ちて消えてしまう。
消える直前に物質は強大な潮汐力により素粒子レベルまでコナゴナに分解される・・・らしい。
ブラックホールの落ちたクーパーも当然コナゴナになるのか・・・と思いきや無事だった。
(何故無事だったのかは次で説明します。)
これはブラックホールの種類に原因があります。
ブラックホールの形態は
「シュヴァルツシルト・ブラックホール」
「カー・ブラックホール」
「ライスナー・ノルドシュトルム・ブラックホール」
「カー・ニューマン・ブラックホール」
の4種類。
このうち回転していないものが
「シュヴァルツシルト・ブラックホール」
回転しているものが
「カー・ブラックホール」
と分類させている。
劇中に登場するガルガンチュアは回転しているので
「カー・ブラックホール」となる。
この2つに落ちた場合、どのような違いが生じるのか?
まず”特異点”の形状が違う。
「特異点」
ブラックホールの中心に存在すると言われる
「大きさがゼロで密度が無限大のポイント」の事。
角運動量を持たない「シュヴァルツシルト・ブラックホール」は”点”として存在するが、劇中では回転する「カー・ブラックホール」なのでリング状になっている。
もしガルガンチュアが回転しない「シュヴァルツシルト・ブラックホール」なら事象の地平線を越えて吸い込まれると
後は真っすぐ中心の特異点に向かって落下するのみ。
そうなればもう助からない。
劇中では回転する「カー・ブラックホール」なので
吸い込まれても真っすぐ特異点に向かわず